[出演]
廣瀬心香 / 北端祥人 / 鈴木皓矢 / 森岡聡 / 古屋聡見 / 畑野小百合
「ブゾーニ」の名に反応を示す人がいるとすれば、その反応の多くは「シャコンヌの人でしょ!」というものでしょう。確かに、稀代のピアニストであったフェルッチョ・ブゾーニ(1866~1924)は、J. S. バッハの《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ》第2番ニ短調の第5曲〈シャコンヌ〉をピアノ用に編曲しており、このピアノ用編曲は、今日の演奏会レパートリーの定番になっています。また、生前からブゾーニの名はバッハと強く結びついていて、アメリカ・ツアーに同行した妻のゲルダが「ミセス バッハ=ブゾーニ」と呼ばれて困惑した、というエピソードも残っています。
しかし、ブゾーニの面白さはバッハ作品の編曲だけでは到底語り尽くせません。特に重要なのは、彼が単に過去の音楽をなぞっていたのではなく、音楽の未来を切り拓くために多様で独創的な挑戦をしていたということです。また、才能豊かなブゾーニは、オペラや管弦楽、さまざまな器楽といった幅広い音楽に加えて、音楽関係の文章や台本、ウィットに富んだイラストも数多く生み出しました。
このようなまだまだ知られていないブゾーニの魅力をご紹介すべく、2022年3月23日にルーテル市ヶ谷ホールにて、ブゾーニ作品のレクチャー・コンサートを開催します!
ブゾーニは、1866年にイタリアのトスカーナ州にあるエンポリという町で、イタリア人のクラリネット奏者である父親と、ドイツ系の血を引くピアニスト母親の間に生まれました。幼い頃から楽才を示した彼は、多才な音楽家に成長し、ピアノ演奏、作曲、編曲、楽譜校訂、執筆などの幅広い分野で活動しました。特に、新しい音楽や音楽に関する新しい動向の紹介に意欲的であったことは、注目すべきことでしょう。
音楽家としてのブゾーニを特徴づけるキーワードのひとつとして、「国際性」を挙げたいと思います。イタリア的な性質とドイツ的な性質の両方を自己の中に認めていた彼は、トリエステ、グラーツ、ライプツィヒ、ヘルシンキ、モスクワ、ボストン、ベルリン、チューリヒを含むさまざまな都市での生活や活動を通して、国際的に開かれた眼を養っていきました。この「国際性」は、ブゾーニのレパートリーや演奏会プログラムにも、オペラの題材にも、物事の考え方にも、さまざまな形で表れています。
今回の演奏会の最大のポイントは、弦楽器を使ったブゾーニの室内楽作品に注目するという点です。ピアノの名手としてのイメージが強いブゾーニですが、早期からヴァイオリンのレッスンを受け、アンリ・ペトリ(1856~1914)などの弦楽器奏者たちとの深い親交を育んだことも知られています。
今回演奏されるのは、ブゾーニの弦楽四重奏曲第2番、バッハの《半音階的幻想曲とフーガ》BWV903のブゾーニによるチェロ&ピアノ版、そしてブゾーニのヴァイオリン・ソナタ第2番です。いずれも滅多に実演に接することのできない、知られざる名曲であり、聴きどころをご紹介するレクチャーとともに、トリオ・ヴェントゥスのメンバーを含む優れた演奏家たちの演奏を存分にお楽しみいただきます。
ブゾーニの弦楽器を用いた室内楽の魅力を堪能していただける演奏会、ぜひご期待ください!
F. ブゾーニ:弦楽四重奏曲第2番ニ短調 op. 26
F. Busoni: Streichquartett Nr. 2, d-Moll, op. 26
バッハ=ブゾーニ:《半音階的幻想曲とフーガ》 BWV 903(チェロ&ピアノ版)
Bach-Busoni: Chromatische Fantasie und Fuge BWV 903, Bearbeitung für Violoncello und Klavier
F. ブゾーニ:ヴァイオリン・ソナタ第2番ホ短調 op. 36a
F. Busoni: Violinsonate Nr. 2, e-Moll, op. 36a
北端祥人 ピアノ
廣瀬心香 ヴァイオリン
森岡聡 ヴァイオリン
古屋聡見 ヴィオラ
鈴木皓矢 チェロ